其の二

その昔、このあたりが野原に囲まれ堀川に小さい橋が架かり、夢枕獏が書いていたような建物を想像してみて、五角形の星を見ると自分が魔法陣の中にいる気がする。
夜が夜であった頃、星は宇宙からの使者だったのだろう。思わず哲学せずにいられない。
きゃー、かっこいいね、聞こえだけ。

しかし、金閣寺はなんと優雅に作ってしまったんでしょうね。
今の建物は再建されたものだとわかっているけど、贅沢三昧・これにつきるわ、別荘?まぁ、なんてさみしいところよ。
池にいたスッポンが妙に現実的でおかしかった。

銀閣寺はいつまでその姿を見せられるのかしら?どっちにしろそれぞれがこれから先に伝えて行くものは、なんなのでしょうか?

栄枯盛衰、よく言ったものです。私たちは、その朽ちていく様も見ていなくてはいけないのでしょう。

月が東山にのぼり、一力茶屋の屋根にかかったそのコントラストは絶妙で こんなお月見は滅多になかった。
私にとって、京都は「かいずかいぶき」の匂いであり、白川砂の白さであるのだ。
ふいに、バスから見る景色に昔を思い出し、あのときの暑さや蝉時雨や川の音がふっとよみがえり、それはまるでタイムマシン。

母が祖母の枕元に行くなり「おかあさん」と叫び涙した、娘は自分の何十年先の自分を見て泣いたあの日は強烈だった。
妹たちを乳母車に乗せて一乗寺の下り松へ歩いた翌日。
今頃祖母は骨になっているのだと、まだなにもわからない乳母車の中の3人を見ながら、怖くて逃げ出したい気持ちで足下を見ていた、35年前の私。
様々な気持ちでこの旅をしたんだ…

彼女はどうだったのだろう?
安倍晴明ではないけれど、同じ名を持ち同じ呪で育ったであろう彼女と時間を共有しながらの旅は、私にとっては最高だった。
懲りずに、また出かけよっか?

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