ともだちへ
お元気ですか?
なんちゃって、向こう岸で見ていますか?
もうあなた達が逝って10年がたとうとしています。
子供たちもそれぞれ大きくなりました。
ヒロハル
いまだにその名前を口にすると、泣きたくなります
この間鎌倉に行きました。
由比ヶ浜は相変わらず、サーファーが何人もいました
その中にあなたがいないかと探してました
さっちゃんは元気です…だとおもいます
ムスコも高校生になった
おかしいね、あのとき隣にいたみんながそれぞれに
その当時の年齢に近い子供たちがいるよ

夕陽の落ちる茅ヶ崎はいいもんだと 行ったよね でも曇っちゃったんだよね
深夜の霧の十国峠で何も見えず怖い思いで車を走らせたね
バタフライの選手だったのにお風呂場で手をついただけで骨折してたね
みんなみんなあの日のまま時間は止まってるんだよ
ここのとこ白浜のお墓参りも行ってないね
そのうち、子供たちといくからね

フクダ君、1つ年上の人だった
サークルの先輩の彼氏だった
先輩を追って受かった学校を中退してこっちにきたんだよね
先輩には敬語だけど、あなたには同等で話してた
不思議な関係だった…でも結局先輩とは一緒にならなかった
京都弁でおっとりとしゃべるあなたは不思議な魅力があった人だった
父の日の前日
明日は父の日だからお出かけしようねと、子供たちに言い聞かせ、行ってきますと
会社へ出かけていった。まさか、それが最後になるなんて誰が想像するだろう?

私たちに知らされたのは、年末の喪中のはがきだった…
事故でした。生前の貴方様の御交友に感謝いたします。
たった一言だった…………・
冬休みを待って私たちは彼の故郷・舞鶴に向かった
聞けば奥さんは憔悴しきって何も手をつけられなくなったそうだった
子供たち3人はまだ就学前だった
彼女のご両親が見るに見かねて連れて帰ると言ったそうで、舞鶴にはいなかった
彼の両親は、籍を抜いて自由になれと言ったらしいが
夫の墓に自分も入れてくれと泣いたそうだ
そうして、籍はそのままでしばらく舞鶴を離れることにした

私たちは、いつもこうして隣にいるのが当たり前の生活をしている
いつ向こう岸へ行くとも限らない
遅い早いとはいわない、けれどこれだけは言いたい
まだ、あなた達のところへは行かない
先に行ってしまって私たちを哀しませた分、うんと待たせてやるつもり!
でも、年をとりすぎて私たちをわからないかも知れない
それでも私たちは行かないよ
鎌倉へ行くことがあったら、またあなたの名前を呼んであげる
舞鶴へ行くことがあったら、あの山のお墓にビールでもかけてあげる
大好きだった、かけがえのないともだちたちへ

                       


あとがきにもならないあとがき   by ヒロチャン 

ヒロハルもフクダ君も大学時代のかけがえのない友達でした。

ヒロハルとは本当によくツルんでました、オトコとかオンナとかを超えた本当にかけがえのない人のひとりでした。
高校時代は水泳部に所属してバタフライの選手だったようでした。
ある日左手にギブスをはめています、どうしたのかと言う問にただ黙って笑っていました。てっきり なみのり(わざとそうやって呼ぶのもヒロハルでした)で怪我をしたのだろうか?と回りを心配させましたが…しばらくしてから、彼女がナイショだけどねぇ…・
お風呂に気持ちよく入って湯船で後ろに手をついたら鈍い音と一緒におぼれそうになったんだって!
まったくカッコつけのヒロハルらしいと大爆笑でした。
ヒロハルとサッチャンは中学からの幼なじみでした
私たちより数年遅れてサッチャンと一緒になり、やはりしばらく子供に縁がなく・・やっと授かった子供たちでした。
暮れには友人たちが久々に集まって飲んだようでした、年が明けてまもなく、肺ガンとわかったもののサッチャンはヒロハルには伝えず、入院になったもののヒロハル自身が見舞いをいっさい断り、桜が咲き、上の子がランドセルを背負って通い始めたときにカッコつけたまま、あっさりと逝ってしまいました。
葬儀には昔の友人が来たのはいうまでもないこと、一周忌も一同そろってうかがったお宅には ヒロハルにうり二つの息子がいました。
お墓が千葉の白浜にあるので、主人と時々行くのです。
今も大好きな海を背に眠っています。

フクダ君は、先輩の彼氏でした。
たまたま同じゼミなどでいっしょになり、彼独自の語りに耳を傾けていたりしました。おっとりとした京都弁でした。
先輩の方がもっと好きな人ができ結婚したと聞きました、こちらに残ったようでしたが、フクダ君は郷里へと帰って行きました。仕事先の関係で大恋愛をして、私たちよりずっと遅くに結婚しました。
たまにおっとりとした口調で電話をかけて来るくらいでしたが、年末にもらった喪中のはがきはしばらく言葉を失うほどでした。冬休みにはいるとすぐに飛んでいきました。せめて最後のお別れをしたかった…そういってダンナはがっかりしていました。夫の友人関係はなかなかわかりませんものね…。

そんな彼らに時々話しかけたくなるのです。

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