はなはな歳時記 ・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・ 紫陽花画集

       

       

秋明菊

秋明菊は白とピンクが多く、濃いピンクのものは別名・貴船菊と呼ばれます。
京都の奥の院・貴船に多く自生しているからだそうですが、その花と見える部分は萼(がく)、キク科ではなくキンポウゲ科であるとか。
白いものは清楚ではかなげ、ピンクのものは素朴な生命力を感じさせる、風情のあるたたずまいですね。

貴船

貴船といえば、かわせみの中のお話にもある「丑の刻まいり」が題材の「鉄輪」というお能の舞台でもあります。
うっそうと繁った木立と清冽な貴船川のおかげで夏でも涼しく、川床で鮎料理などを味わうのも格別ですが、本社から結社、奥の宮に至る道筋は、ひんやりとしてどこか不気味で、そこらの木に藁人形が打ち付けてありやしないかと、怖くなってきます。神武天皇の母・玉依姫が乗ってきた「黄船」を隠したという船型の石積みも、何かが宿っていそうな雰囲気です。まして真夜中、丑の刻。旅館もなく、ひとけもない、昔はどんなに暗く、怖しかったことでしょう。

鬼ならぬ人の身であれば

「鉄輪」、元は平家物語の中の剣ノ巻に収められている説話なのですが、丑の刻まいりについてはみなさまご存知のとおり。お能では、男に捨てられた女が丑の刻まいりをして鬼になり、男を殺そうとする話になっています。
でも女は鬼にはなりきれず、男を殺さずに去っていきます。その証拠に、役者が懸ける面は「橋姫」「生成(なまなり)」などで、「般若」に代表されるような鬼の面ではないのです。
女はなぜ男を殺せなかったか、なぜ「今は時期を待つ」と言い残して消えたのか、鬼ならず人の身であればこそ、未練が残ったのかもしれません。
いずれにせよ、鬼になりたいと願うほど人を愛した女を、私は幸せだと思うのですが…、現実には許されないことなのでしょうね。

――― はなはな

 


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「かわせみ」物語をテーマにした、はなはなさんの作品 ⇒ 「はいくりんぐ」 ⇒ 大川端で五七五」
※はなはなさん始め「かわせみ」ご常連皆さんの作品は「みんな大好き五七五」に収録されています

はなはなさんのお能に関する句とエッセイ ⇒ 「お能『妄想』日記」


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